金利上昇はマンション市場を「壊さない」!首都圏マンション市場のリアルな構造変化を解説

  • 2026/3/8
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金利上昇でも市場は崩壊せず!首都圏マンション市場で起きている「選別」とは?

2025年12月、日本銀行は政策金利を0.75%まで引き上げ、市場ではさらなる追加利上げの可能性も指摘されています。一般的に金利が上がれば、住宅ローン金利も連動して上昇し、「住宅購入需要が冷え込み、マンション価格は下落する」と考えられがちです。

しかし、実際の首都圏マンション市場では、単純な需要減少ではなく、もっと複雑な構造変化が起きていることが分かりました。

インフレと実質賃金の乖離が示す家計の現状

まず、現在の経済状況を見てみましょう。インフレ率(消費者物価指数の前年同月比)は2~4%で推移しており、日本は明確なインフレ局面です。一方で、実質賃金は長らくマイナス圏に沈んでおり、「物価の上昇 > 賃金の上昇」という状態が続いています。

日本全国インフレ率(消費者物価指数「総合」の前年同月比)と実質賃金の推移

つまり、「物価高」「実質所得減」「借入コスト増」という三重苦に直面している家庭が多い中で、本来であれば住宅需要は冷え込むはずですが、マンション市場は一筋縄ではいきませんでした。

首都圏中古マンション価格のリアルな動き

首都圏の中古マンション成約坪単価の推移を見ると、興味深い違いが見えてきます。

一都三県:中古マンション成約坪単価推移

  • 東京都: 明確な右肩上がりを継続

  • 神奈川県・埼玉県・千葉県: 横ばい基調

この違いは、市場に参加している層の違いにあります。

  • 東京都: 投資需要と実需が混在する市場

  • 神奈川・埼玉・千葉: 実需中心の市場

同じ金利上昇という外部環境の変化でも、市場の構造によって影響の受け方が異なるのです。

東京都:1.5億円を境に起きた構造変化

東京都の販売データを価格帯別に見ると、さらに明確な構造変化が確認できます。

東京都: 1.5億円以上と未満の中古マンションの販売日数と値下げ回数

1.5億円以上の高額帯

2024年9月前後から「販売日数の増加」と「値下げ回数の増加」が同時に発生しています。これは、売れるまでに時間がかかり、値下げをしても売れにくい状況を示しています。

この時期は、政策金利が0.25%に引き上げられ、「金利のある世界」が現実になったタイミング。調達コストが増えたことで、特にレバレッジを活用する投資層にとって厳しい環境となりました。また、この価格帯は投資層と高所得実需層(いわゆるパワーカップル)が混在しているため、投資マネーで押し上げられていた価格水準に対し、実需層がついていけなくなり、需要が減退したと考えられます。

1.5億円未満のゾーン

一方で、1.5億円未満のゾーンでは真逆の現象が起きています。「販売日数の短縮」と「値下げ回数の減少」が見られ、値下げをしなくても売れる状態が続いています。これは、高額帯から準高額帯へ需要がシフトしたことを意味します。

高所得実需層がより価格を抑えたゾーンへ移動したことで、購入母数が増加し、流動性がむしろ高まったのです。金利上昇は「需要減少」ではなく「価格帯の再編」を引き起こしたと言えるでしょう。

三県でも起きたグレードダウン

神奈川・埼玉・千葉でも同様の現象が確認できます。

埼玉県、千葉県、神奈川県における築年帯別の成約数の割合

2024年7月前後を境に、「2006年以降築の高価格帯物件の成約比率が低下」し、「築年数の古い物件の成約比率が上昇」しました。価格水準自体は大きく崩れていませんが、購入対象が「築浅・高価格」から「築古・価格抑制型」へとシフトしています。

ここでも共通しているのは、需要は消滅していないものの、選ばれる物件が変わったという点です。

金利上昇は価格を下げなかった理由

金利上昇によって、高額帯・投資寄り市場は減速しましたが、需要は価格を下げる方向ではなく、別の価格帯へ移動しました。結果として、政策金利の上昇はマンション価格全体の下落には直結しなかった、というのがこれまでの分析から導き出される結論です。

2026年の鍵:実質賃金の転換

今後の焦点は実質賃金です。2026年は、賃上げの継続によって実質賃金がプラスに転じる可能性が高いと見られています。もし「実質所得の改善」と「金利上昇の吸収」が同時に進めば、住宅購入余力は回復し、金利上昇があっても「価格下落」ではなく「選別強化」へと進む可能性の方が高いでしょう。

結論:調整は「市場全体」ではなく「価格が先行した部分」から起きる

金利上昇が直ちにマンション市場全体の価格下落を引き起こすわけではない、という事実が見えてきました。実際に起きているのは、

  • 高額帯から準高額帯への需要移動

  • 築浅から築古へのグレード調整

  • 投資主導ゾーンの減速

といった、価格帯や物件特性ごとの再編です。需要は消滅しておらず、可処分所得と金利環境に合うゾーンへ移動しているだけなのです。

その中で、今後最も注意すべきなのは、「価格だけが先行したエリアから調整が始まる」という構造です。具体的には、

  • 実需の裏付けを超えて投資資金が流入したエリア

  • 所得水準の上昇を上回るスピードで価格が高騰したエリア

  • 「築浅×広面積帯」など、価格プレミアムが過度に乗った物件群

こうした「価格主導型」の市場から、流動性の鈍化や価格調整が顕在化する可能性が高いと考えられます。

住宅ローン金利の最新動向

住宅ローン金利は、変動金利、10年固定金利、全期間固定金利の全てで上昇傾向にあります。DHローン指数(ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクター株式会社が共同で作成している住宅ローン金利の参考指標)を元にした各金利の推移を見てみましょう。

変動金利

DH住宅ローン指数の推移 (変動金利)

2026年1月の変動金利はほぼ横ばいでしたが、前年同月比では明確に上昇しています。2025年12月の日銀利上げを受け、緩やかな上昇トレンドが継続中です。今後も追加利上げ観測があるため、短期プライムレート連動の変動金利には引き続き上昇圧力がかかる局面と言えるでしょう。

10年固定金利

DH住宅ローン指数の推移 (10年固定金利)

2026年1月の10年固定金利は明確な上昇となりました。日本国債10年物利回りの上昇を受け、多くの銀行が金利を引き上げ、2%超、中には3%台に到達したところもあります。長期金利が市場環境をより反映するようになり、固定金利は上昇局面のただ中にあります。今後も財政拡張や利上げ観測が重しとなりやすい状況です。

全期間固定金利

DH住宅ローン指数の推移 (全期間固定金利)

2026年1月の全期間固定金利も3か月連続で上昇し、指数は3%台に到達しました。超長期国債利回りの上昇を背景に、フラット35を含む全金融機関が金利を引き上げています。変動金利との金利差は拡大していますが、長期ゾーンの上昇圧力が強く、固定型は最も市場金利の影響を受けやすい局面です。今後は高水準での推移が見込まれます。

筆者プロフィール

福嶋 真司氏のポートレート

福嶋 真司(ふくしましんじ)氏は、マンションリサーチ株式会社データ事業開発室の不動産データ分析責任者であり、福嶋総研の代表研究員を務めています。早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社や建築設計事務所での経験を経て、現在は不動産市場調査・評価指標の研究開発や顧客企業の事業意思決定サポートに携わっています。大手メディアや学術機関にもデータおよび分析結果を提供しています。

TAKAweb master

投稿者プロフィール

いろんなことに興味を持ち、いろいろ試しています。
曲がったことが大嫌いで、噓をつく人は嫌いです。
嘘があふれる世の中で真実を追求する姿勢が大切だと思います。

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