首都圏のマンション在庫増加はホント?実は都心の高額物件に集中していた!

  • 2026/8/29
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首都圏の在庫増加、その正体は?

東日本不動産流通機構(REINS)のデータを見ると、確かに首都圏全体の中古マンション在庫は増えている傾向にあります。しかし、これを東京都と周辺3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)に分けて見てみると、意外な事実が。

なんと、埼玉県、千葉県、神奈川県の中古マンション在庫は、むしろ減少傾向にあるんです!

つまり、首都圏全体の在庫増加は、東京都、特に都心部に集中していることが原因で、数字が押し上げられているということなんですね。

この違いは、今の不動産市場を理解する上でとっても重要です。なぜなら、都心の高額マンションと、郊外の実需中心のマンションでは、買う人の層も、価格の決まり方も全然違うから。これらをまとめて平均値で見てしまうと、市場の本当の姿を見誤ってしまう可能性があります。

都心5区は「値下げしても売れるまで時間がかかる」

では、東京都の状況をさらに詳しく見ていきましょう。特に注目したいのが、都心5区(千代田区、中央区、港区など)の動きです。

都心5区: 中古マンションの「販売日数」と「成約までの値下げ率」

都心5区では、最近、マンションが成約するまでの値下げ率が大きくなっています。つまり、売主さんが価格を下げないと売れにくいケースが増えているということですね。ところが、値下げ率が上がっているにもかかわらず、販売にかかる日数はむしろ増えているんです。

普通なら、価格を下げれば買い手が増えて、早く売れるはずですよね。でも都心5区では、価格を調整しても売れるまでの時間が長くなっているんです。これは、「価格を下げれば売れる」という単純な市場から、「価格を下げても、買い手の希望と価格の折り合いがつきにくい」市場に変化している可能性を示しています。

都心5区には1億円、2億円を超えるような高額物件もたくさんあります。金利の上昇で住宅ローンを借りられる金額が変わるだけでなく、富裕層の投資判断や資産の分け方なども価格に影響してくるので、今までのように「ちょっと価格を下げればすぐ売れる」という状況ではなくなっているのかもしれません。

都心5区以外では「値下げで流動性を維持」

一方で、東京都23区から都心5区を除いたエリアでは、少し違う動きが見られます。

23区(都心5区を除く): 中古マンションの「販売日数」と「成約までの値下げ率」

このエリアでも、最近は成約までの値下げ率が上がる傾向にあります。しかし、都心5区と大きく違うのは、値下げをすることで販売日数が一定に保たれている点です。

つまり、売主さんが市場の変化に合わせて価格を調整し、その結果、買い手との価格の折り合いがついている、と考えることができます。

このエリアは、都心5区に比べて実際に住むための実需層が多いのが特徴です。住宅ローンを利用して購入する世帯も多いため、金利が上がって購入できる価格帯が下がると、買い手はよりシビアな価格で物件を見るようになります。そのため、売主さんが価格を調整することで成約に至る、という構造が生まれているんですね。

「平均6400万円」という価格水準が示すもの

成約価格についても見ていきましょう。

23区(都心5区を除く): 中古マンション平均成約価格

都心5区を除く23区では、最近の成約価格はおおよそ6,400万円前後で推移しており、この水準でバランスが取れているように見えます。もちろん、すべての物件がこの価格で売買されているわけではありませんが、実需層が中心の市場でこの水準が安定しているのは注目すべき点です。

特に今は住宅ローンの金利が上がっているので、買い手の返済負担は以前より大きくなっています。この状況を考えると、現在の平均成約価格6,400万円前後という水準には、すでに一定の価格調整が反映されているのかもしれません。

都心5区: 中古マンション平均成約価格

一方、都心5区では価格のバラつきが大きく、全体としても価格が少し下がってきています。これは、都心部の高額物件については、市場がまだ新しい価格水準を探している段階にある、ということかもしれませんね。

高額マンションの在庫増加が市場全体を押し上げる

さらに、売出価格8,000万円以上の象徴的なマンションについて、個別の在庫推移を確認すると、よりはっきりとした傾向が見えてきます。

在庫状況マップ

このマップでは、在庫が減っているマンションを赤、横ばいを黄、増えているマンションを青で示しています。これを見ると、東京都心部、特に千代田区、中央区、港区に青い点がたくさん集まっているのが分かりますよね。

つまり、東京都内でも「どこでも売れにくくなっている」わけではなく、特定のエリア、特定のタイプのマンションに在庫増加が集中しているんです。

そして、在庫が増加しているマンションには明確な共通点があります。それは、高額な大規模マンションやタワーマンションが多いということです。

都心部には、数百戸、時には1,000戸を超えるような大規模マンションがあります。こうしたマンションは、1棟あたりの供給戸数が非常に多いため、たとえ1つのマンションで売り出し在庫が数十戸増えただけでも、市場全体の在庫数を大きく押し上げてしまうんです。

つまり、都心部の大規模マンションやタワーマンションの在庫増加は、単純な「1物件の売れ残り」という話ではありません。供給戸数そのものが多いからこそ、これらのマンションの流動性低下が、東京都全体、さらには首都圏全体の在庫統計に大きな影響を与えている、ということなんですね。そして現在、価格調整の対象となっているのも、まさにこうした高額・大規模・タワーマンションが中心となっています。

「首都圏全体が売れなくなった」と考えるのは危険!

ここまで見てきたことを踏まえると、現在の中古マンション市場を「首都圏全体で流動性が低下している」と捉えるのは、ちょっと違うかもしれません。

実際には、埼玉県、千葉県、神奈川県では在庫が減少傾向にあり、東京都23区でも都心5区を除けば、価格調整をしながらも一定の流動性が保たれています。

一方で、千代田区、中央区、港区を中心とする都心部では、高額な大規模マンションやタワーマンションの在庫が増加し、価格調整と販売期間の長期化が同時に進んでいる、というのが今の状況です。

そのため、都心部の在庫増加によるインパクトが非常に大きく、結果として「首都圏全体の在庫が増えている」「中古マンションが売れにくくなっている」という印象につながっている、と考えられます。

これから重要になるのは「平均値」ではなく「どこで起きているか」

今後の中古マンション市場を分析する上で大切なのは、首都圏全体の在庫数や平均価格だけを見るのではなく、「どのエリアで在庫が増えているのか」「どの価格帯なのか」「どのマンションタイプなのか」「値下げによって売れているのか、それとも値下げしても販売期間が長期化しているのか」といった、もっと細かい市場分析が必要になります。

特に今のように金利が上がって買い手の予算が変わったり、高額物件ほど買い手層が限られたりする状況では、同じ東京都内であってもマンションごとの流動性に大きな差が生まれます。

だから、今の市場を「中古マンションが売れなくなった」と一言で片付けてしまうのは、ちょっと早計かもしれませんね。むしろ今起きているのは、市場全体が崩れているわけではなく、都心の高額・大規模・タワーマンションを中心とした、ごく局所的な流動性の低下です。そして、この局所的な変化が、大きな供給戸数を持つマンション群に集中しているため、統計上は首都圏全体の在庫増加として表れている、ということなんです。

今後の市場を見る上では、「在庫が増えた」という事実だけでなく、その在庫がどこに積み上がっているのかを見ることが、マンション価格の先行きを判断する上で、これまで以上に重要になってくるでしょう。

筆者プロフィール

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福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員

早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社でマーケティング調査を担当。その後、建築設計事務所で法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発などを行う傍ら、顧客企業の不動産事業における意思決定のサポートに従事。大手メディアや学術機関にもデータや分析結果を提供しています。

マンションリサーチ株式会社の関連サービス

マンションリサーチ株式会社では、不動産売却一括査定サイトを運営しており、2011年の創業以来、日本全国の中古マンションデータをはじめ、約3億件の不動産売出事例データ、不動産売却を考えるユーザー属性の分析データなどを収集しています。これらのデータを基に、集客支援・業務効率化支援や不動産関連データ販売などを行っています。

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投稿者プロフィール

いろんなことに興味を持ち、いろいろ試しています。
曲がったことが大嫌いで、噓をつく人は嫌いです。
嘘があふれる世の中で真実を追求する姿勢が大切だと思います。

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