都心マンション市場に変化の兆し?73カ月ぶり下落で「適正価格」が問われる時代へ

  • 2026/6/20
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都心3区のマンション市場に何が起きているの?

特に注目したいのは、流通量が豊富な都心3区(千代田区・中央区・港区)です。これらのエリアでは、成約㎡単価の下落幅が比較的大きくなっていることが印象的ですね。これまで都心部は、国内の富裕層だけでなく、海外投資家や高所得の共働き世帯など、多様な層の需要に支えられて価格が上昇してきました。

しかし、最近では「価格がどんどん上がる市場」というよりは、「価格と流動性のバランスがしっかり問われる市場」へと局面が移り変わっているように見えます。

シンボリックマンションで在庫が増加中

平均価格8,000万円以上の、いわゆる「シンボリックな高価格帯マンション」の在庫推移を見ると、その変化がより明確になります。

都心マンション在庫推移マップ

この地図を見ると、港区や中央区の湾岸エリアなど、これまで価格上昇を牽引してきた象徴的なマンション群で「青いプロット」(在庫増加傾向)が目立っています。これらのエリアは、実需層に加えて投資家や海外からのマネーも多く流入していました。価格が上がっていた時期は、売り出せばすぐに売れるような状態が続いていたんです。

しかし今は、売り出し物件が増えているのに、なかなか成約に至らず、結果として在庫が積み上がっている状況が見られます。これは単純に「マンションが余っている」というわけではありません。市場参加者が「これくらいで売れるだろう」と期待する価格と、実際に購入を検討する人が「この価格なら買える」と納得する価格の間に、ギャップが生じていると見ていいでしょう。

周辺住宅エリアでは流動性が維持されている

面白いのは、同じ都心エリアでも、シンボリックマンションの周辺にある住宅エリアでは「黄色のプロット」(在庫横ばい)が多く確認できることです。つまり、市場全体から需要が消えてしまったわけではなく、一定の取引は続いているということですね。

例えば、湾岸エリアの超高額タワーマンションでは在庫が増えている一方で、その周辺の住宅地や、もう少し手が届きやすい価格帯のマンションでは、比較的安定した取引が継続しています。これは、市場が弱くなったというよりも、購入者が価格に対してより慎重な判断をするようになった結果と考えられます。「どんな物件でも売れる相場」から、「適正価格の物件が選ばれる相場」へと移行しているのかもしれません。

在庫推移から見える市場の変化

さらに、在庫が増えているシンボリックマンションをいくつかピックアップして、販売価格と在庫推移の関係を分析したデータを見てみましょう。

港区シンボリックマンションAの販売坪単価と時期(推定成約・販売中)

上のグラフで青いプロットが推定成約、オレンジ色が販売中を示しています。下のグラフは在庫の推移です。この物件では、2021年7月から2024年5月頃まで、在庫が非常に少ない状態で推移していました。在庫が少ないと、市場に出回る物件数も少なくなるため、成約件数も限定されます。それでも当時は、市場に出れば短期間で売れるほど流動性は高かったんです。

ところが、2024年6月以降になると状況が変わってきます。

港区シンボリックマンションAの販売坪単価と時期(2018-2026)

市場在庫は徐々に増え始めるものの、推定成約を示す青いプロットはほとんど増えていません。これはつまり、新しく売り出された物件が成約に至らず、そのまま在庫として残ってしまっている状況を示しています。

ゼロ金利解除と市場心理の変化

この変化のタイミングは、単なる偶然ではないかもしれません。2024年7月には、日本銀行による実質的なゼロ金利政策が解除されました。日本の不動産市場は、長らく超低金利の恩恵を受けてきましたから、住宅ローン利用者だけでなく、不動産投資家や資産家も「低金利が続く」という前提で投資判断をしてきた側面があります。

しかし、金利が上昇局面に入ったことで、将来の住宅ローン負担増加や、投資の期待利回りの見直しが進み、市場参加者の心理に変化が生じ始めたと考えられます。さらに2026年1月頃には、在庫の増加が加速しています。この時期は、政策金利が1%近くまで上昇しただけでなく、中国経済の減速や、中国系投資家・インバウンド需要の変化なども重なった時期です。これまで都心のタワーマンション市場を支えてきた一部の投資需要が弱まり始めた可能性も考えられますね。

「暴落」ではなく「適正化」が進む市場へ

最近では「不動産バブル崩壊」や「マンション価格暴落」といった、ちょっと刺激的な言葉を耳にする機会も増えました。しかし、今回のデータから読み取れるのは、市場全体の大きな崩壊ではなく、一部の高価格帯マンションにおける価格調整の兆候です。

むしろ、過度に価格が上昇して購入が難しくなっていた市場が、実需層が購入できる水準へと徐々に近づいていく過程と捉えることもできます。東京都心の住宅需要そのものがなくなったわけではありません。人口の集中、雇用の集中、再開発、交通の利便性といった都心の強みは、依然として健在です。

大切なのは、「都心のマンションはすべて下落する」「マンション価格は暴落する」といった極端な見方をするのではなく、エリアごと、物件ごとの流動性や需要と供給の関係を、丁寧にじっくり見極めることでしょう。今後の東京都中古マンション市場は、価格上昇率よりも流動性が評価される時代へ移行していくかもしれませんね。在庫の動きは、その変化を最も早く映し出す、重要な指標の一つと言えそうです。


筆者プロフィール

福嶋真司氏のポートレート

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員

早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社でマーケティング調査を担当。その後、建築設計事務所で法務・労務に携わる。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査や評価指標の研究・開発を行いながら、顧客企業の不動産事業における意思決定をサポート。大手メディアや学術機関にもデータおよび分析結果を提供しています。

TAKAweb master

投稿者プロフィール

いろんなことに興味を持ち、いろいろ試しています。
曲がったことが大嫌いで、噓をつく人は嫌いです。
嘘があふれる世の中で真実を追求する姿勢が大切だと思います。

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