都心マンション、再開発エリアで「売れ残り」増加中?住宅地は安定人気!

  • 2026/5/24
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在庫推移で見る「本当に売れているマンション」

今回の調査では、平均売出価格が8,000万円以上の中古マンションを対象に、それぞれのマンションの在庫がどう変化しているかを調べました。在庫の動きは、中古市場の需給バランスを映し出す大切な指標。価格が上がっているからといって、必ずしもすぐに売れているとは限らないのです。

調査期間は2024年1月から2026年3月で、東京都23区内の中古マンション182,367事例が対象となりました。公開されている売出情報を集めて統計処理を施し、分析しています。

具体的には、在庫がどんどん減っているマンションを「流動性大(評価A)」、安定しているマンションを「流動性中(評価B)」、在庫が増えてなかなか売れないマンションを「流動性低(評価C)」と分類しています。高価格帯の市場では、価格が上がると買い手が慎重になりやすく、売却期間が長くなる傾向が見られます。

東京および周辺地域の在庫状況

千代田区・港区で進む「再開発エリアの価格」への警戒感

千代田区を見てみると、番町・麹町のような昔からの住宅地では、「流動性低(評価C)」のマンションは比較的少なめでした。これらのエリアは、教育環境や住みやすさが評価され、安定した需要があるのが特徴です。

一方で、秋葉原・神田といった皇居北側のオフィス・商業エリアでは、「流動性低(評価C)」の割合が相対的に高くなっています。大規模な再開発やオフィス需要への期待でマンション価格が大きく上がったものの、その価格上昇に対して、実際に住む人たちの購入負担感が強まっているのかもしれません。

千代田区の在庫状況

港区でも似たような傾向が見られました。麻布・白金・赤坂といった住宅地の色が濃いエリアでは「流動性低」の割合が比較的少ない一方、浜松町・田町・高輪ゲートウェイ周辺など、再開発が進んだ商業・オフィスエリアでは「流動性低」のマンションが増加しています。

特に高輪ゲートウェイ周辺や浜松町エリアでは、大規模開発によって街の将来性が大きく期待され、周辺の中古マンション価格も急激に押し上げられました。しかし、市場全体が高値圏に達したことで、「再開発への期待がもう価格に織り込まれすぎているのでは?」という見方も強まっているようです。再開発は街の価値を高めますが、短期間で価格が急騰したエリアほど、買い手はより慎重になっていると言えるでしょう。

高すぎる物件ほど売却に時間がかかる傾向

千代田区・港区で「流動性大(評価A)」と「流動性中(評価B)」のマンションを分析すると、平均坪単価は比較的近い水準でした。これは、市場で需要を維持している物件は、相場から大きくかけ離れていない価格帯に収まっていることを示しています。

ところが、「流動性低(評価C)」に分類されるマンションは、評価A・Bの物件と比べて平均坪単価が15〜20%程度高い傾向が見られました。つまり、築浅で高級、再開発エリアという良い条件が揃っていても、「価格が上がりすぎた物件」は売却に時間がかかりやすくなっているのです。

評価別:平均坪単価と物件の全体比

近年は住宅ローン金利の上昇への警戒感や世界経済の先行き不透明感などもあり、高額物件の購入には慎重な姿勢が強まっています。以前なら「将来もっと上がるだろう」という期待で買われていた物件でも、今は「この価格で本当に適正なのか?」という厳しい目で見られるようになっているようです。

港区で強まる「築浅プレミアム」の見直し

港区では、近年の再開発や高級レジデンスの供給によって、坪単価が急激に上がりました。麻布台・虎ノ門・芝浦などでは、超高級の築浅マンションが次々と供給され、市場全体の価格水準を押し上げています。

しかし、一部の物件では売出し期間が長くなる傾向も見られ始めています。これまでの上昇局面では、「築浅であること」や「タワーマンションであること」が強い価格優位性を持っていました。しかし今は、築年数よりも「価格とのバランス」が重視される時代へ移りつつあります。

特に数億円規模の高額物件では、富裕層であっても購入判断が慎重になりやすく、眺望、間取り、管理品質、ランニングコストなど、細かい条件まで比較されるようになっています。つまり、港区だから、築浅だから、という単純な理由だけで売れる時代ではなくなりつつあるのです。

中央区湾岸で進む「湾岸内格差」

中央区では、湾岸エリアと内陸部で市場の特性がはっきりと分かれました。

まず湾岸エリアでは、「流動性大・中」のマンションと「流動性低」のマンションの間で、平均坪単価に大きな差が見られませんでした。これは、湾岸市場では「価格が高いから売れない」という単純な構図ではなく、個別のマンションの条件によって売れ行きが分かれていることを示しています。

例えば、駅からの距離、眺望、方角、管理状態、修繕計画、共用施設、投資比率、間取りなど、細かい条件で買い手の評価が大きく変わっている可能性があります。

中央区の在庫状況

さらに注目すべきは、中央区湾岸エリアでは「流動性低(評価C)」のマンションが全体の3割以上を占めていたことです。一方で、「パークハウス勝どき」や「ドゥトゥール」といった湾岸を代表する高級マンションは、高い流動性を維持しています。これは、買い手が「湾岸全体」ではなく、湾岸の中でも「勝ち組」と言えるマンションを選び始めていることを示唆しています。

中央区内陸部は実需支えで安定推移

一方、中央区の内陸部では異なる傾向が見られました。日本橋・人形町・八丁堀・築地周辺などでは、「流動性中(評価B)」のマンションが全体の約9割を占めており、在庫の大きな増減はなく、比較的安定した需給バランスが保たれています。

中央区内陸部の坪単価と物件の全体比

これらのエリアは、職場に近い場所で住みたいというニーズや交通の便の良さが評価され、投資目的だけでなく、実際に住む人たちによる安定した購入需要が続いています。また、湾岸エリアほど価格変動が急激ではないため、買い手も価格に対して安心感を持ちやすく、極端な高騰相場になっていないことも安定につながっていると考えられます。

「全体高騰相場」から「個別選択の高騰相場」へ

今回の分析から見えてくるのは、都心高額中古マンション市場が「全体的に価格が上がる相場」から、「選ばれた物件だけが価格を上げる相場」へと変化しているということです。

これまでは、都心、湾岸、築浅、タワーマンションといったキーワードだけで価格上昇が期待できる時期が続いていました。しかし今後は、単純なエリアブランドだけでなく、「その価格が適正か」「実際に住む人に支持される条件が揃っているか」が、より重要になっていくことでしょう。

特に築浅で高価格帯の物件では、価格上昇への期待よりも「売れ残るリスク」を意識する時代に入りつつあります。つまり、今後の都心マンション市場では、「何を買っても上がる時代」ではなく、「選ばれるマンションだけが強い時代」へ変化していく可能性が高いと言えるでしょう。

筆者プロフィール

福嶋真司氏

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員

早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社でマーケティング調査を担当。その後、建築設計事務所で法務・労務に携わる。現在はマンションリサーチ株式会社で不動産市場調査や評価指標の研究・開発を行いながら、顧客企業の不動産事業における意思決定をサポート。大手メディアや学術機関にもデータや分析結果を提供しています。

マンションリサーチ株式会社では、不動産売却一括査定サイトを運営しており、2011年の創業以来、日本全国の中古マンション約14万棟のデータや、約3億件の不動産売出事例データ、不動産売却を考えているユーザーの分析データなどを収集しています。これらのデータを基に、集客支援や業務効率化支援、不動産関連データ販売などを行っています。

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  • 資本金 : 1億円

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投稿者プロフィール

いろんなことに興味を持ち、いろいろ試しています。
曲がったことが大嫌いで、噓をつく人は嫌いです。
嘘があふれる世の中で真実を追求する姿勢が大切だと思います。

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